どうしてこんなにおいしいんでしょうね。一口、口に含むたびに涼しげな優しさに満ちた安心感が、身体の中に、心の中に、溢れてくるのが分かります。確かに身体に力が湧いてきます。心と身体から疲れた力が抜けていくのです。ガスパチョは、スペインのとてもポピュラーな食べ物です。それぞれの家庭で日常的によく食べます。でも同じように日本の野菜で作っても、心と身体が安心感に満たされるようなおいしさは決して出来ません。使う一つ一つの野菜がバラバラのまとまりのない淋しい味わいにしかなりません。私の考えでは、私の子ども時代から比べれば、今の日本の野菜の栄養素はかつての10分の1ほどまでに激減してしまいました。国産の新鮮な野菜を毎日多めに摂ったとしても私たちの身体や細胞が必要としている栄養素は決して十分には補給されません。悲しく情けないけれど、これが日本の食材の真実なのです。一方、スペインの土地は豊饒の極みです。作られる野菜には今もギッシリと幅の広い豊かな栄養素が詰まっています。
ガスパチョの素材と作り方はとてもシンプルです。一番大事なことは、使う野菜とオリーブオイルにどれだけ幅の広い豊かな栄養素が含まれているかです。スペイン・アンダルシアの土地には、日本の土地とは比べ物にならないほどのミネラルが含まれています。そして、野菜作りに必要な適度の雨が、トマトや玉ねぎに豊かな生命の息吹を与えてくれるのです。1週間に2~ 3回、朝・昼の食事に取り入れてください。不足しているものがしっかりと補給されます。特に、何となく身体に力が入らない、けだるいような朝には最適です。身体に芯を与えてくれます。とある食を大切にしているエネルギッシュそのもののお客様にガスパチョを贈りました。
やっぱり彼ははまってしまいました。店に来られるたびに「弓田さーん、やっぱりありゃ、うめえ。すげーよー。口にすると1本まるまる飲んじゃうよー」と、いつも声を大にして叫ばれます。んー、有難い。お客様は神様です!!
暑い時期には、ガスパチョにみょうがと青じそを散らした冷製のスパゲッティやそうめんも、絶品と言えるほど本当においしい。身体がぱっちりと目を醒まします。またこのガスパチョで日本の素材では作ることのできない本当においしいトマトソースも出来ます。
ミルクパウダー(全脂粉乳)を使うお菓子は限られています。洋梨やフランボワーズのババロアや、パン類に使う程度です。ババロアはもともと牛乳と卵黄で作られ、間に洋梨をサンドしたりしていました。それが進化して洋梨を煮て旨味を濃く含んだその煮汁を牛乳の代わりに使い、卵黄と共に加熱してクレーム・アングレーズを作るようになりました。
しかし牛乳で作った味わいも捨てたくないということで、全脂粉乳を加えるようになったと私は理解しています。
もちろんここで味わいの希薄な日本産の全脂粉乳やスキムミルクを使えば、最終的なババロアの味わいは大きく損ねられてしまいます。フランスと日本の乳製品の間にはどうしようもない大きな違いがあります。日本産は無味乾燥の淋しい味わい、フランスのものはたちどころに心と身体がふっくらと温まるとても嬉しい味わいなのです。
これはパン作りでもまったく同じです。もちろん値段にも大きな差はありますが、可能な限りの旨さを目指してクロワッサンやサンドイッチのためのパン、パン・ドゥ・ミなどに加えています。本当に嬉しいおいしさが詰まったパンが焼き上がります。