私のルネサンスごはん ごはんとおかずのルネサンス

第4回:永野智子さん(栄養士/熊本県熊本市在住)

永野智子さん プロフィール

小学校勤務の栄養士、36歳。2児の母。ボランティアで食に関する勉強会や料理教室を開催。また耕作放棄地を使って野菜作りを始めるなど、学校給食から本当に元気になるものを食べさせたいと思って日々活動している。2010年4月に玉名市で開催された弓田亨講演会を聴いたことをキッカケに、同年秋に弓田亨講演会を熊本市にて開催。

また、昨年4月から、東日本大震災復興チャリティ料理教室を開催し、収益を全額寄付(材料費、・会場使用料を除く)している。

次回予定は4月と5月。4月は、季節の野菜をたっぷり使った料理教室。5月は、「魚屋さんに教わる、魚をさばいて丼とあら汁を作ろう!」

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【その1】学校栄養士として、何とかして子どもたちが毎日食べる学校給食から、
本当に元気になる食べ物をたべさせたいと思っています。
やはり「いりこ」には強い力を感じます。

──永野さんは学校で栄養士をされている、ということですが、「栄養士」と一口に言っても、いろんな場面で専門もいろいろ異なると思います。永野さん自身は、小学校の現場で実際にどのように栄養士として関わっていらっしゃるのでしょう?

永野智子さん(以下:永野) 仕事の中心は、学校給食の運営、管理です。文科省から出されている給食の栄養価基準にそって献立をたて、材料を発注し、調理して子どもたちに給食を提供し、後片付け・・・というのが流れです。給食費はかなり安く、使える食材が限られていたり、食数によって調理でできることがかなり違うので、なかなか思ったような給食はできませんが・・。

──そんな永野さんとルネサンスごはんとの最初の出会いを教えて頂けますか?

永野 2010年4月、玉名で弓田さんの講演会を聴き、『失われし食と日本人の尊厳』を読んだことです。

──そもそも「食」に興味を持ったキッカケは何だったのでしょう?

永野 我が子に生まれつきの持病があったことがキッカケでした。心から「健康に育ててやりたい!」と思い、「本当の食とは何か?」ということを、自分なりに勉強してきました。

 仕事外でも食育活動を始めており、最近では、我が子が通う保育園で、佐世保の「大地といのちの会」の吉田先生が提唱されている「生ゴミリサイクルで元気野菜作り」を、耕作放棄地を使って始めているところです。

 熊本でも保育園では、食育に本当の意味で力を入れ始めたところが多く、給食がどんどん変わっていっております。

※大地といのちの会の吉田先生(写真中央)の指導で、生ごみ堆肥を作っているところ。

※保育園のちびっこたちも参加しています。

※畑で育った里芋の葉っぱで遊ぶ子どもたち

※生ごみ堆肥だけで、しっかりした味の大根が収穫できました。
収穫するときの子どもたちは、本当にキラキラ輝いています。

──ちなみに、具体的にどんな風に保育園での給食が変わってきたのか、教えて頂けませんか? 以前はどういうメニューを食べていて、今とどう違うのか。

永野 我が子が通っている保育園は、園長先生が食に関心がおありで、もともと和食中心、いい材料を使った献立でした。せっかくなので、もうちょっと・・ということで、ルネサンスごはんの基本のご飯を紹介して、いりこを使ってくださるようになりました。

 子どものお弁当にルネサンスの基本のご飯を入れていたのを保育園の先生がつまみ食いして(笑)、「とってもおいしいから」ということで、何度か保育園の給食としてルネサンスの基本のご飯を出した、なんていうこともあったようですよ。

 また、保護者が生ごみリサイクルの畑で育てた、無農薬、無化学肥料の元気いっぱいの野菜を、皮ごと使ってもらっています。

──弓田の著書『失われし~』の中で、いろいろ栄養士についても批判していると思うのですが、永野さん自身「栄養士」という観点から見て如何だったのでしょう?

永野 新しい観点(舌の記憶)から、今の日本の食を見直し、どうやったらそんな日本でも健康を保て、しかもおいしい食事ができるか、ということを述べられていて感動し、早速家でルネサンスごはんを作り始めました。

 特に3種類のお米を混ぜて炊くご飯はおいしくて、家の外までご飯の炊ける香りが広がり、子どもたちも喜んで食べています。

──そこから、永野さんたちが弓田亨の講演会を開くまで、早かったですね。

永野 4月に弓田さんの講演を聴いた後、食をとても大切にされている近松さんとメールのやりとりをしていました。そこで9月19日に再度弓田さんが玉名で講演会をされると知り、近松さんから「だったら午後はそちらで講演を企画しませんか?」というお話をいただき、是非、午後は熊本市(又は近郊)で、講演をして頂きたいと思いました。

一緒に講演を聴いた友人の学校栄養士も、「学校の栄養士仲間にも是非聞かせたい」ということで、とにかく栄養士や若いママさんなどに、積極的に弓田さんの話を聞いてもらえたら、と思いました。

学校の栄養士にも、数字合わせの栄養計算による献立作成ではなく、本当に元気になる食べものを作らなくちゃいけない!と、発破をかけていただければと思いました。

※2010年9月19日午後に行われた熊本市フードパルで講演する弓田亨。

※若いママさんたちも熱心に弓田の話を聞いていました。

──栄養学と食は、相容れるようで実は乖離している部分もあると伺いましたが、永野さんは実際にギャップを感じることはありますか?

永野 計算上の栄養価の数値ばかりに気を取られすぎているということは、ルネサンスごはんに出会う前から多々感じていたことです。先祖代々続けてきた食によって、私たちの体はそれに合うように変化しているのですが、それらが考慮されることはほとんどありません。そして、これだけ生活習慣病や難病、精神疾患、発達障害が増え、医療費が国家を押しつぶそうとしているのに、健康の基本である食を根本から見直すことなく、栄養学と医学が乖離していることも、とても残念だと思っています。

──永野さんから見て、ルネサンスごはんの特色は何だと思いますか?

永野 近松さん(第3回「私のルネサンスごはん」参照)も仰っていましたが、まず「おいしさ」ありきなところですね。また足りなかったおいしさが「いりこ」を加えることで完成し、同時に現代の食生活の大きな問題であるミネラル不足が解消できるという「栄養」の面まで完成したというところに、大きな魅力を感じます。

──講演会の後、周りでのルネサンスごはんの反応は如何ですか?

永野 いりこが手放せなくなった方が多いようです(笑)。「出汁や料理にいりこを加える」という最初の一歩だけでも、多くの方が実践してくださっているようで、嬉しいです。

──弓田の講演会の後も、食育祭や保育園の保護者が集まるイベント等で、進んでルネサンスのいりこ入りご飯の試食を作って食べてもらうような活動をされていますね。

永野 保育園の保護者や一般の参加者など、30名ほど集まって、佐世保の吉田先生の講演会を開いた時に、ルネサンスごはんの試食を出しました。吉田先生の講演が終わる時間に合わせて、会場の後ろで炊飯器をセットしていたのですが、講演の最中に、ものすごくいい香りが部屋中に・・・(笑)「ポップコーンを食べているのは誰だ!?」と思った方もいらっしゃったそうです(笑)。

 吉田先生が講演会の中で弓田さんとこのご飯について説明してくださり、「僕はオリーブオイルを入れた時点でしっかりこすって炊く。すると、ふすまの部分に傷がついてオリーブオイルが浸透しやすくなり、とても柔らかくなっておいしく炊ける」と仰っていました。参加者の反応もよかったですよ。「とってもおいしい」「作ってみたい」という声をたくさん頂きました。

──わぁ。それは嬉しいですね。お子さんがおいしいと言ってくれたら、親御さんもまた作ろう、という気持ちにもなりますものね。それにしてもポップコーンのニオイって(笑)。

永野 そうですよね(笑)。その後も、保育園保護者の懇談会の際に、「ルネサンスごはんが食べたい」という要望があったので、基本のご飯を食べていただき、説明をしましたよ。

リクエストされた方は、「家でも炊いているんだけど、どうもおいしく炊けない」と仰っていて、どうやらタイ米がおいしさの秘訣かも、と言う結論を出されていました(その方はタイ米を入れていなかったので)。

──それにしても近松さんといい、永野さんといい、皆さんの行動力は頼もしいですね。我々も、保育園でルネサンスごはんを取り入れてもらえるところはないかなぁと思っているのですが…。実際のところ、給食を変えていくというのは難しいことですよね。

永野 特に学校給食というのは、一食単価がとても安く、行政も絡むため、とても変えるのが難しく、一栄養士の力ではどうにもなりません。私も弓田さん同様、日本の将来を憂う一人です。何とかして子どもたちが毎日食べる学校給食から、本当に元気になる食べものを食べさせたいと思っています。

──学校給食という観点で言うと、永野さんに教えて頂いた長野県元真田町の教育長の大塚貢さんの話も、ちょっと希望を感じさせるお話として印象的でした。

永野 私は2010年2月にあった佐世保の食育祭で、大塚さんの講演会を聴きました。「学校給食で子どもたちが変わった」という話です。荒れている学校で、玄米を含む米飯給食にしたこと、魚を食べさせるようにしたということ。そして講演の中で、給食+片手に乗るくらいのいりこを食べさせたと仰っていました。

 また、これは別の話ですが、武豊騎手が修行時代におやつがわりに毎日毎日いりこを食べ続けていたという話も聞いたことがあります。騎手は太ってはいけないけれど、練習量がすごいからお腹が猛烈に空く。だけど太るものは食べられないから、仕方なくいりこを毎日すごい量食べていたと言うんです。しっかり噛まなくてはいけないから、満足感があるとか。こういう話を聴いていると、やはりいりこの力って大きいんだなぁと思いますね。


その2へ・・・

【その2】仕事を持つ母として日々の料理も工夫しています。いりこの入っただし汁は常に冷蔵庫にストック。ルネサンスの和え衣もいろいろ応用出来て便利です。





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