私のルネサンスごはん ごはんとおかずのルネサンス

第4回:永野智子さん(栄養士/熊本県熊本市在住)

【その2】仕事を持つ母として日々の料理も工夫しています。
いりこの入っただし汁は常に冷蔵庫にストック。
ルネサンスの和え衣もいろいろ応用出来て便利です。

──ご家庭ではどんな形でルネサンスごはんを取り入れてますか? また、アレンジレシピなどありましたら教えてください。

永野智子さん(以下:永野) 「基本のごはん」はよく食べていますが、なかなかレシピ通りに作る時間がないので、玄米ご飯にアーモンドを入れるだけ、ということも多いです。

──仕事をしていて、小さなお子さんもいて、家事をするというのは大変だと思いますが、ルネサンスごはんの考え方を取り入れながら、上手に手抜きというか、段取りをつける永野さん流の工夫があったら教えて頂けますか?

永野 ええ(笑)。いりこの入っただし汁は、常に冷蔵庫にストックをして、いろんな料理に加えています。思いがけない食材を組み合わせるおいしさも教えて頂いたので、料理が前にも増して楽しくなりました。

 だしのストックさえないときは、いりこや昆布をそのまま料理に加えますし、とにかく何でも、旬の食材や乾物を多くの種類使って作る、それプラス、塩をちゃんと利かせて料理の輪郭をはっきりすると、本を見なくても、ルネサンスの料理ができるかなーと思っています。小さな子どもを見ながらの夕食の準備は、戦争のように忙しいので(笑)。

 スペイン産、フランス産のナッツ類のおいしさも知り、ご飯をはじめ、炒め物、煮物、揚げ物の衣など、様々な料理に使っています。

──そういえば、冷蔵庫にはイルプルのアーモンドダイス(刻みアーモンド)の1㎏袋が常にストックされているとか(笑)。

永野 イルプルのものは、炒ると、他のアーモンドとは香りが違うなぁと思います。アーモンドダイスをフライパンで炒って、昆布の佃煮に加えたおにぎりの具もおいしいですよ。

 とにかく私は、「おいしいものが食べたい」ので(笑)、いくら栄養があって体にいいものでも、おいしくないといやなんです。ルネサンスごはんの一番好きなところは、「心も体も満足するおいしさ」があるところです。

──実際にお子さんを育てている中で、ルネサンスごはんを食べるようになってから変わったな、と思うことはありますか?─

永野 5歳の息子は、普通のご飯が炊けても何も言わないのですが、ルネサンスごはんの「基本のごはん」が炊けるときは、家の外にいても「ママ!ご飯の匂いがするね!」と言います。料理の匂いや味に敏感になりましたし、食材の組み合わせにも興味が出てきて、食全般にとても興味を持つようになりました。

 また、私自身も、ルネサンスごはんを作り始めて半年ぐらいして家庭で料理にほとんど砂糖やみりんを使わなくなってから、砂糖が入った料理がほんとうにまずいと感じるようになりました。それと同時に、化学調味料の味に敏感になりました。なぜか以前は飲んでいた発泡酒も、まったくおいしくなく思えて飲めなくなりました。料理から砂糖を抜いただけでこんなに舌が敏感になるとは…。甘いものは好きで食べているのに、この変化。弓田さんの仰る「料理とお菓子は違う」ということが、理屈でなく、身体でわかったような気がします。

──本の中で、特に「これが好き」「これは作ったけどハズレなし」というメニューがあれば教えてください。

永野 簡単でおいしい松前漬け(『ごはんとおかず~ おせち料理編』)はよく作り、お裾分けしたりしています。胡麻くるみいんげん(『ごはんとおかず~ 今昔おかず編』)の和え衣もおいしくて、いろんな野菜に和えて使っています。鰯の天ぷらやかきあげ(『ごはんとおかず~ 基本編』)のビールとナッツの入った衣もとてもおいしいです。

※胡麻くるみいんげん。和え衣はいろんな野菜に応用できる

※かき揚げの、ビールが入った衣も応用自在。

──なるほど。和え衣や天ぷらなどの衣は、いろいろ応用に使えそうですね。

永野 ああ、いりこ入りのハンバーグも絶品でした!それから…子どもの保育園の運動会の時には、おでんパーティーをしたこともあります(笑)。

──パーティー、ですか?

永野 はい。いりこと昆布と鯛のアラでとった出汁で、ルネサンス流に具材をたくさん炊いたおでんを作って。

──鯛のアラが入るなんて、豪華ですね(笑)。食べた皆さんの反応は如何でしたか?

永野 好評でした。必ず「味付けは何?」と聞かれるのですが、塩と醤油だけですので、おそらく出汁がよかったのかな、と。いりこもそうですが、魚の骨で出汁をとると、本当においしい出汁が出ますね。あとは、いい野菜をたくさん入れることかな、と思います。

──最近は料理教室などにも取り組んでらっしゃいますね。その際は、ご自身で作られた、野菜を使っているんですね。

永野 はい。先日、保育園で料理教室をしました。前日まで仕事が忙しくて準備としては多少不十分でしたが、「利き出汁」(出汁の飲み比べ)として、①昆布・かつお・アゴの出汁、②顆粒の出汁の素、③いりこの出汁を比べてもらったり、収穫した野菜を使って、七分づきご飯、炊き込みご飯、季節の野菜の味噌汁、卵とホウレン草のソテー、大根と人参の葉っぱとじゃこのふりかけを作りました。

※料理教室で炊き込みご飯。いりこと昆布をそのまま炊飯器に入れているところ。

※料理教室での子どもたち。畑で取れたほうれん草と卵のソテーを作っています。子どもたちはみんな、基本的に料理が大好き。

※子どもたちに「利き出汁」をしているところ。

──炊き込みご飯と味噌汁は、もちろんルネサンス式で?

永野 はい。炊き込みご飯は、具をそのまま加えて炊くタイプ(下煮しなくていいもの)を作りました。保育園の保護者は、誰もがとても忙しいので、とにかく「手軽においしく、でも栄養たっぷり」を意識しています。野菜がいっぱい食べられるうえ、調理にかかる時間は切るだけ。あとは炊飯器がやってくれるので、コンロも空きます。調味料も適当でOK。味見は、すべての食材、調味料を内釜に入れたら、汁をペロッと舐めるだけ。最初は、味見で塩加減がわからなくても、味を覚えていれば、3回も作れば、家の分量の味くらいはマスターできますしね。

 それに、こんなに手軽なのに、おかず一品くらいの野菜が食べられる!これをもっと、勧めたいと思って、ご紹介しました。出汁もとらずに、昆布といりこを一緒に入れて食べちゃえますし。

──ちなみに何ご飯でしたか?

永野 鶏肉と野菜がいっぱいの鶏ご飯です。『炊き込みご飯と味噌汁編』は、ルネサンスごはんシリーズでも一番好きで、よく作ります。特に、「熊本の呉汁」が載っていたのが嬉しかった! 学校給食でも、月に1回くらい、呉汁を出すんですよ。呉汁の素は使わず、大豆をゆでて大型のミキサーにかけて呉を作るのですが、具だくさんの汁に入れると、本当においしいです。

──弓田自身、熊本で4年、お菓子の修業をし、「第二の故郷」と呼んでいるくらいですから(笑)。ぜひ熊本の皆さんにも、郷土料理などを入口に、「ルネサンスごはん」に親しみを持ってもらえたらいいですね。
 あと、永野さんの中で、今後、弓田亨にぜひ取り組んでほしいと思うことがありましたら、教えて頂けますか?

永野 これは私にとっても大きな課題だと思っているのですが、食関連の講演会や料理教室、話す機会がある時に参加してくださる方は、もともと食に対して関心のある方ばかりです。今、一般的な家庭の食の現状は、想像以上にひどいものです。

 子どもたちの将来のことを考えると、これからどうなってしまうのか、とても心配です。現状を変えるにはどうしたらいいのか、何から始めたらいいのか…個人の力はとても小さいと感じています。

 弓田さんと共通点のあるお考えで活動されている方々と、ぜひ手を取って、大きなうねりを起こしていただけたら…と期待しております。

──そうですね。永野さんにも、ぜひルネサンスごはんのサポーターの一人として、広める活動をして頂けたらと思います(笑)。最後に。あなたにとってルネサンスごはんとの出会いは、どういうものでしたか?

永野 改めて料理の楽しさを教えてもらうと同時に、これからの日本の食、農業を真剣に考えていくきっかけになりました。おいしさと栄養の両方を満たした料理の完成形を見たように思います。

──ありがとうございました!


【その1】学校栄養士として、何とかして子どもたちが毎日食べる学校給食から、本当に元気になる食べ物をたべさせたいと思っています。やはり「いりこ」には強い力を感じます。





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