IL PLEUT SUR LA SEINE――フランス語で、
「セーヌに雨は降る」という意味です。
初めてのフランスでの研修。小雨にけむるセーヌの河岸は、ちょうど2歳になり片言を話し始めたばかりの、日本に残してきた子供を偲ぶための、これ以上と ない情景でした。子供心にも全てを理解し、母の腕の中で「行くな」とバタバタあばれる様は、私の忘れえぬ、生きていく限りの心の傷であり、私のお菓子作り の人生を大きく規定するものでした。
店を開くにあたり、あの時の思いを織り交ぜた名前を付けたいと考えました。精神性溢れるお菓子作りをめざし続けるための、自戒を込めた名前の選択でした。
「セーヌに雨は降る」
私のお菓子作りへの思いと生き様は、全てこの名前の下にありました。