特別編:桐島洋子さん(作家)
桐島洋子さん プロフィール
1937年7月6日、東京生まれ。蟹座A型。
'56年都立駒場高校を卒業して、文藝春秋に入社し、9年間ジャーナリズム修行ののち、’65年退社し、フリー・ライターとして世界を巡遊。’67年には従軍記者になり、ヴェトナム戦争を体験する。’68年からアメリカで暮らし、'70年処女作「渚と澪と舵-ふうてんママの手紙」刊行を機に帰国。'72年には、アメリカ社会の深層を抉る衝撃の文明論「淋しいアメリカ人」で第3回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。 以来マスメディアの第一線で著作・テレビ・講演などに幅広く活躍しながら、独身のまま、かれん(モデル)・ノエル(エッセイスト)・ローランド(フォトグラファー)の3児を育て上げる。 料理ブームのさきがけとなったベストセラー「聡明な女は料理がうまい」や、女性の自立と成熟を促した「女ざかり」シリーズをはじめ、すべて実体験に基づく育児論、女性論、旅行記などは、その斬新な発想と痛快な迫力で広く人気を集めた。 '82年には勝見洋一(美術鑑定家・エッセイスト)と結婚。子育てを了えてからは、”林住期”を宣言して仕事を絞り、年の三分の一はカナダで晴耕雨読し、人生の成熟の秋を穏やかに愉しみ、環境問題・ホリスティック医療・氣功・精神世界などにも関心も深めている。
桐島洋子さんHP>>>http://www.yoko-kirishima.net/
桐島洋子さんの誕生日とルネサンスごはんの会
<移動祝祭日 ルネサンス ルネサンス>を開催しました
去る2013年7月15日の海の日、桐島洋子さん主宰「森羅塾」の不定期イベント<移動祝祭日>の一つとして、ルネサンスごはんの会をする機会をいただきました。
そもそもは教室講師・深堀先生が桐島さんの森羅塾に通っていて、そのご縁でこういう会をやることになったのです。椎名先生も、桐島さんの著書のファンで女学生時代、『聡明な女は料理がうまい』の中に登場するモリュー・ベシャメル・オ・グラタンなんて西洋料理の名前を見てはどんな料理なのかしらとときめいていたそうです。それが本当に縁って不思議なものですね。
ちなみに森羅塾とは、「何のトクにもならないかもしれないのに、ともかく縁あってここに集った仲間たちが、知・情・意の触れあいを愛しみながら、芳醇な成熟の季節を共に楽しみ、さらに何かしら社会にフィードバックできるような「人間力」を活性化するサロンにしたい」と、桐島さんが2008年にご自宅を開放して作ったサロン。講座の参加費の一部はミャンマーの寺子屋などに寄付されているそうです。
そして今回のイベント<移動祝祭日>は、パーティー好きな桐島さんが、正月、節分、クリスマスなど機会をみつけては森羅塾で一緒に祝い遊ぶ祝祭講座の一つとして企画されました。第1部で桐島さん宅で誕生日パーティーをし、第2部でイル・プルーの教室に移動してルネサンスごはんの会という趣向です。桐島さんの告知の文章がとても素敵だったので、ここでちょっと引用させていただきます。
「移動祝祭日その2 ルネサンスルネサンス」
この変わったタイトルを見て、これは一体ナンジャラホイと首を傾げておられることでしょう。
でもごく単純な話で、私が大好きなルネサンスをダブルで楽しんでしまおうという、ちょっと欲張った祝祭講座なのです。ルネサンスは言うまでもなく再生や復興を意味し、私が愛するボッテイチェリやレオナルド・ダ・ビンチが活躍した15世紀イタリアの文藝復興がルネサンスの本元です。
今年76歳になる私は、これからは自分の誕生日を再生の日として格好よくルネサンスと呼ぶことにしました。ほんとの誕生日は7月6日ですが、今年は8日遅れの15日、海オンナにふさわしい海の日に、わがルネサンスを祝うパーテイーを開催いたします。どうぞふるってご参加下さい。特製のバースデー・ケーキとシャンパンで、お互いの年輪と成熟を祝福しあおうではありませんか。このパーティ―が午後3時から始まります。場所は中目黒の森羅塾で2時半から開場しております。
さて2番目のルネサンスですが、これはまたガラリと趣向が変わります。場所もちょっと歩いて代官山のど真ん中にある名高いお菓子学校「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」の白亜のスタジオに移動します。
そしてまず特別講演会「ごはんのルネサンス-真実の食が日本を救う」講師はイル・プルー・シュル・ラ・セーヌ校長で、日本で一番美味しいフランス菓子を作るパティシェとして知られる鬼才・弓田亨先生です。しかしここで語られるのはフランスのケーキではなく、味噌汁やきんぴらごぼうなど日本伝来の食に対する熱い思いです。舌鋒鋭く料理の堕落を説き、それを先導した土井勝、辰巳芳子氏などの責任を容赦なく糾弾し、古き佳き日本の健康な家庭料理のルネサンスをめざす弓田先生のお話は非常に刺激的で、貴方の台所にもルネサンスをもたらすかもしれません。講演のあと、先生の一番弟子・椎名真知子氏によるルネサンス料理のデモンストレーション。そして最後にその料理を実際に味わう夕食会になります。
これで「ルネサンスルネサンス」というタイトルの意味を御理解いただけたと思います。盛大なルネサンスになるよう、みなさまのご参加をお待ちしております。
さて。18時過ぎ。総勢28名の御一行様がイル・プルーに到着しました。
18時30分より、第2部のルネサンスがスタート。ギュウギュウで熱気ムンムンの教室で、まずはボスによる講演です。タイトルは、「日本の食の実像とルネサンスごはん」です。
フランス菓子をつくるパティシエとして日本とフランス、スペインなどを行き来し、外側から日本の食を客観的に見る位置にあったこと。そしてフランス菓子づくりにおいても日本とフランスの素材の違いを克服するために15年ほどの時間を要したこと。そして日本の食材からいかに栄養素が減っているか。また栄養素を壊したり、捨て去る料理法がいかにまかり通っているか。熱く語るボス。
そしてボスが話している間も、既にバックヤードで料理の仕込みが始まっており、椎名先生、深堀先生、教室スタッフらが、炊き込みご飯、汗っかき肉じゃが、味噌汁などを大忙しで準備しております。話の合間合間に時折ダシのいい香り、炊き立てのご飯の香りがしてきます。
桐島さんもボスの話に真剣に耳をかたむけてらっしゃいます。
約1時間(少しオーバーしましたが)のトークを終えたボスから今度は椎名先生にバトンタッチ。
デモンストレーションで金平ごぼうのつくり方を見せながら、テキパキとルネサンスごはんのポイントを説明していきます。ニンジンやゴボウがどのくらいの大きさで切っているか、炒め具合はどんな感じか、などを、ほかの調理法との相違点を交えながら、分かりやすくお話します。
この時、いつも通りにデモンストレーションしているように見えたのですが、実は桐島さんを前にして、椎名先生、かなーり緊張していたそうです。
そして金平ごぼうのデモンストレーションが終わるころには、既にバックヤードで準備を着々と進めていたおかずたちもテーブルに並べられ、いよいよ試食タイム。
ボス、椎名先生、深堀先生が各テーブルを回りながら、より細かく料理の説明をしていきます。
今回は、しらすかちりご飯、さやいんげんの味噌汁、汗っかき肉じゃが、金平ごぼう、ぬか漬け、そして基本の白いご飯。皆さん笑顔で食べてます!!!
桐島さんも皆さんとテーブルを囲んで試食タイム。
そしてひとしきり試食タイムの後・・・。
やはりうちは「日本一の」菓子屋ですから。デザートも食べていただこうということでケーキタイムに。でもその前に。サプライズで桐島洋子さんのバースデーケーキをご用意させていただきました。
電気を消してロウソクに火をともし、ハッピー・バースデー!
ケーキを前に笑顔の桐島さん。そして会場はあっという間に撮影大会へと突入。
私も負けじとボス、椎名先生、深堀先生と、桐島洋子さん4人の記念写真を撮らせていただきました。
さて。撮影大会が終わったら、全員でケーキタイムです。
デザートに出したケーキはイル・プルーの看板商品の一つ、トゥランシュ・シャンプノワーズ(シャンパンのムースのケーキ)です。
「あんな健康的な料理を食べた後に、ケーキ食べちゃっていいのかしら」
そんな声が聞こえてきたので、すかさずボスが説明を。
「塩味の料理は、からだに豊かな栄養素を送り込むために食べるもの。甘いものというのは心のためのものなんです」
そういって震災後に宮城に住む生徒さんたちにお菓子などを送った時、それまで茫然自失としていた人がイル・プルーのお菓子を食べた後元気になったというエピソードを披露し、お菓子が持つ力についてお話しました。
「もちろんご飯を食べないでお菓子ばかり食べるのはダメですよ」
すると桐島さんも面白いお話をしてくださいました。
以前、書いた原稿で、「男性はデザート」という文章を書いたそうです。その意味としては、メインディッシュ(仕事とか、その他いろいろ)を食べないでデザート(=男)ばかり漁っていては、素敵な女性にはなれないよ、というようなお話だったそうです。なるほど!いろんな意味でデザートばかり食べる偏食はよくないってことですね。
会が終了し、皆さんがお帰りになられた後、みんなで残り物でご飯を食べました。
ボスもとてもいい気分だったみたいで、「俺も一緒に食べる」と言い、お気に入りのビールとスパークリングワイン(うちのクレマンじゃなかったけど)などをかいがいしく出してきて(グラスまで出してくれました!)、ごはんを食べながら「いやぁ、本当に今日はいい一日だった。こんな有意義で満たされた時間を過ごすことはそうそうないよ」と、とても嬉しそうでした。
こんなことを私が言うのは生意気かもしれませんが、ボスも桐島さんも、お互いに自分に正直に生きてきたところがあって、それで相通じる部分があるんじゃないかなぁと。あとボスは文章を書くのが好きなので、桐島さんの文章の豊かな表現力とかにもう、それこそゾッコンになってしまった様子。とにかく「あんな勇気ある人生を送ってきたのってスゴイよなぁ」と、何度も何度も初コラボの余韻に浸っていました。
私たちスタッフも皆、桐島さんに魅了された一日でした。また何かでコラボできたら。そう仰っていただけたことも、とても嬉しかったです。