第15回:平舘のり子さん
【その2】我が家のもう1つのルネサンス
東北の食材や伝承料理も「ルネサンスごはん」に通じているんですね!
本気で伝えようとする気持ちに感謝して、私も子供に伝えなければ…
──平舘さんは地元を離れ、現在は盛岡にお住まいなんですよね?小さい頃の特別な“食”に関する思い出や記憶はありますか?
平舘 歳を重ねると、現在の出来事より昔の記憶が蘇るのですね。亡き母や祖母、叔母に料理を作ってもらったり、一緒に作ったことが思い出されます。いつの間にか、死者と話しながら傍で笑顔で話しかけられているような時間が流れることがあるんです。そんな時はありがたい気持ちになって涙がこぼれます。
突然主人に里心がつき、自分の意思ではなくこんなに遠くに来て、脱サラして会社を設立…バブルの時代ですよ。仕事と家庭、眠る時間がないくらい、身体の動く限り一生懸命でした。今は切符さえあれば、すぐに故郷に戻れるようになりましたが、もう母も誰もいないんです。
──慣れない土地でいろいろな思いをされたんですね…。
人生の半分くらいを過ごしている東北にも身体に良い食材がたくさんありそうですが、いかがですか?
平舘 初めて盛岡を訪ねた時、義母おすすめの南部の山クルミと、義父が朝市で買って来てくれた見たこともない沢山の山菜でクルミ和えやゴマ和えを作ってもらいました。
今になって思うと、「ルネサンスごはん」の基が加わっているのですね。どれもおいしかったので、「おいしい、おいしい」と言ったら、滞在中毎日いただくことになりました。また、秋の夜長も朝市で見つけた山クルミの殻を割って、実をほじくります。昔の人のように「素材を大切に」をまねっこしています。
──東北の食材を使った、おいしい料理はありますか?
平舘 私は弘前という街の、静かで上品で優しさのある言葉使いが大好きです。たまに津軽の伝承料理を教えてくださる、平均年齢は後期高齢者前後の『あかつきの会』の皆さんの講習会や東北のふるさと料理レッスンに参加させていただいています。どれも手が込んでいるわけではないんです。
それに、料理名もステキで、干し柿を加えた「嫁なます」、いわしのだまっこを作って加える「だまっこ汁」などなど。「煮りんご」も素朴で、6~8つに切ったりんごをアルミのお鍋に皮を下にしてそのまま並べて蓋をし、7~8分火にかけて冷まします。冷めると、きれいなピンク色に仕上がり、昔はおやつになったそうです。講師の方々の「昔のごはんはこんなにいいんだよ、おいしいのよ」と本気で伝えようとする気持ちに感謝して、私も子供に伝えなければと思いますね。
(上から時計回りに)煮りんご、ねりこみ、だまっこ汁、炊き込みごはん、嫁なます
秋はさんまでだまっこを作ります
(上から時計回りに)うどんの酢味噌和え、フキと身欠きにしんの煮物、ぜんまいの白和え
──「ルネサンスごはん」を通して、“食”についての考え方で何か変わった点はありますか?
平舘 まず、具沢山のメニューを作るので、食材を無駄にしなくなったことです。あとは、デパ地下のお惣菜を見てもすぐに買いたい気持ちにはなりませんね。食材の産地も国産にこだわらなくなりましたが、かといって外国まで野菜は買いに行けません。
日本はキレイな野菜が多いです。つい手が出てしまいますが、タヌキやカモシカが来たり、時には熊も出没する山間にある主人の家庭菜園で作る“無手入れ・無農薬・形の悪い・虫食いもある野菜”にも感謝して、大事にしていきたいです。雑草の中のみょうがやサラダ菜などには虫が付かないんですよ。
はじめ、いりこの内臓も食べる勇気がなかったのですが、栄養素を沢山持っていることで主人や息子への効力を実感し、私も足がつったり痙攣することがほとんどなくなったので感謝しています。
私が留守中に食事担当になる息子は一人暮らしの時のようにコンビニのお弁当を買うことができないそうです。常備してある「ルネサンスごはん」の材料で忙しい時は雑炊が手軽でおいしく、満足だと話してくれました。
──平舘さんのように、「ルネサンスごはん」を長く続けられるコツはありますか?
平舘 時間がある時に食材を切って、容器に入れ、冷蔵庫で保存しておくこと。乾物、根菜類、野菜は常備しておくこと。「ルネサンスごはん」メニューを一度に沢山並べないこと(おいしいおいしいと食べ過ぎてしまうことと、片口いわしが身体の周りを回遊している夢を見てしまわないように…笑)。
メニューにいりこ、昆布、厚削りかつお、干し椎茸、スペイン産アーモンド、オリーブオイルを取り入れて食べるのが当たり前になっていること。「いつか顔のシミが薄くなれば…」、「主人の髪が復活して昔のように熊になったら…」という楽しみと感謝と希望を持ち、考案してくださった弓田校長先生と丁寧においしく作って指導してくださる椎名先生を信じていることです。
──ありがとうございました。これからも「ルネサンスごはん」で元気を維持して、イル・プルーのレッスンにたくさんご参加くださいね。