プロ向け菓子・料理本の紹介
[新装版]Les Desserts レストラン、ビストロ、カフェのデザート
―心燃ゆるキュイズィニエに。“時を超えたイマジナスィオン”―
定番のフランス菓子からオリジナルの新作まで。代官山「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」オーナーパティシエ弓田亨のフランス菓子全83品を収録。プロ向けの技術講習会でも定評ある丁寧な教え方が一冊の本にまとまった、弓田理論の集大成。素材の選び方や作り方のポイント、お店でのサーブのコツなども満載です。
※本書は2007年5月小社刊の本を再編集したものです
☆マカロン、シュトレンは最新ルセットに!
●掲載レシピ●
〔冷たいデセール〕
ブラン・マンジェ3品、プディン5品、ムース4品、バヴァロアズ6品、果物のコンポットゥ5品
〔氷菓〕
グラス6品、ソルベ5品、スフレ・グラッセ5品、アントルメ・グラッセ5品、口直しのグラニテ2品
〔常温のデセール〕
タルトゥ5品、ショコラのビスキュイ5品
〔温かいデセール〕
温性のデセール4品、スフレ・ショ5品、クレープ5品
〔コーヒーと共に小菓子〕
小さい焼き菓子2品、マカロン5品、プティ・ショコラ4品
〔秋から冬、クリスマス〕
シュトレン、ビルヴェッカ等、心温もる菓子4品
伝統的なフランス菓子を中心に、氷菓から温かいデセールまで全83品
私の生涯の友であるドゥニ・リュッフェルはいいます。
「お菓子からはじめて、次に料理を学び、大成した料理人は少なくない。お菓子を十分に学んでから料理に入れば、料理はよりやさしく理解できる」
この言葉を私は次のように理解しています。パティスリーでは、お菓子はつくられてからお客様を待ちます。いつ、どのような条件のもとで食べられるかは分かりません。精緻につくりあげられなければ、お客様の口に入るまでに最良のおいしさは損なわれてしまいます。そのため菓子作りには厳密な考え方、仕事が必要なのです。
これは料理にとってもまったく同じことです。お客様を迎えるまでのさまざまな舌仕事を化学的な考え方のもとに緻密に積み上げ、完全な準備をしておかなければなりません。そして注文とともにつくり手は神経を最高に集中し、自分が培ってきた感覚によって短時間で料理を仕上げます。
手仕事としてのお菓子作りにも、料理づくりにも、化学的な考えによって物事を生死に再現してつくり続ける訓練が必要なのです。
いま日本の多くのパティスィエは、ほとんど主体性もなく、お菓子の配合にのみ寄りかかり、味わいへの豊かなイマジナスィオンを持つこともなく、お菓子をつくり続けています。そしてほとんどのキュイズィニエもまた、聖地への心の技術と訓練を怠り、実体のない浮き草のような味わいに自信なく身を委ねています。
本書の「時を超えた」とは、浮ついた時の流れに身を任せることなく、修練された自分の心と感覚に鋭敏に従い、ただ誠実にお菓子と料理をつくり続けることです。
ドゥニ・リュッフェル氏がつくるものはけっして時代の流れに負けず、二十年、三十年の時を経ようとも常にまばゆい光を放ち続けます。彼はいいます。
「子どもの頃、母が作ってくれた本当においしい料理やお菓子、そしてそれらによって培われた家族のきずなと暖かさに満ち溢れた思い出。これが私のすべてであり、ここから離れて料理やお菓子をつくることは何の意味ももたない」と。
料理とお菓子は次代の雰囲気や流れに献ずるべきものではありません。それを食べる人に、心と身体の喜びを健康を与えるために、そして人と日とを結びつけるためにあるのです。
私の心をまとった本書のデセールが、これからみなさんが探し求め、築き上げていく、時を超えた味わいの料理に添えられることを心より願います。